「世の中のコンプレックスを持つ女どもよ!そのコンプレックスは永遠と無くなるわけない!。己を呪うか、諦めて、せいぜい身のなりの人生を受け止めろ」 【宇宙を駆けるよだか 】レビュー

 

宇宙を駆けるよだか 1 (マーガレットコミックス)
 

 

宇宙を駆けるよだか


先日、おうちのリビングで妹分のMちゃんがNETFLIXでドラマを観ていたので、何ぞなんぞ?とおしゃべりながら鑑賞しました。

 

少女マンガ原作のドラマであらすじをざっくり書くと、

 

火賀俊平、水本公史郎、小日向あゆみは幼馴染み。
ずっと想いを寄せていた公史郎と恋人同士になったあゆみだったが、初デートの日、醜い容姿を持つクラスメイトの海根然子と体が入れ替わってしまう。誰もそのことを信じないなか、火賀だけは入れ替わりに ...
https://yodaka-switched.com/

 

というSFチックなお話なのですが、このお話、はっきり言うと、

「世の中のコンプレックスを持つ女どもよ!そのコンプレックスは永遠と無くなるわけない!。己を呪うか、諦めて、せいぜい身のなりの人生を受け止めろ」

という救いのないパワフルな少女マンガ的なお話なのでした。

 

わたしが観ていて感じたのは、
あゆみは、利己的な都合(社会)に対しての強者
海根さんは、利己的な都合(社会)に対しての弱者
という構図です。

 

うわあ残酷、、。

 

美人のあゆみは性格も真っ直ぐで、疑うことも知らず、恵まれた家庭で、、、幼馴染はイケメン2人(両方ともあゆみが好き)という、
まさに都合の良い少女マンガの典型的な主人公。
一方、海根さんは、その容姿がゆえに小さい頃から蔑まれ暗く卑屈な性格に、親は離婚し母親は情緒不安定でパチンコ通いと。

 

もし、貴女だったらどっちに感情移入してしまうでしょう?

 

私は悲しいけれど、あゆみには全く感情移入できなかったです。

まじかよーこれ、救い無いよおお、、と

叫びながら観てました。


なんかもう観ていて、海根さんが痛々しくて可哀想で仕方ない。

海根さんは、自分の置かれた過酷な環境に対しての、最後の抵抗で入れ替わりを実行したのでしょう。もはや、これは生存戦略といってもいいかもしれないなと。

 

しかしながら、そこで彼女は”淡い恋心を抱いた男の子の気持ちを手に入れること”しか欲さない。もう人魚姫みたいなものです。


しかも自分のコンプレックスの象徴でもある美貌をあゆみと入れ替わることで手に入れられたとしても、心の中の孤独や怒りは根本的にはだれにも理解してもらえない


とりまく男(加賀、水本)たちも”結局はホンモノのあゆみに良く思われたい”という気持ちで色々動いているのは見え見えです。
そんなのね、少女だからといって気づかないわけがない。こういうことって、女性はめちゃくちゃ傷つくものです。

 

海根さんは悪い女になりきれない、無垢な女性なのかなと。もちろん、あゆみもそうなのですが、基本は二人とも無垢な少女。

強い者に優しくて、弱い者に残酷な世界そのものなんですよね、漫画の中なのに。


そんで更に、あゆみという像自体が社会の求める”理想像”みたいなもので、海根さんには何も多様性を与えられないんですね。
ここが一番救いが無いなと。

 

もうねあゆみになった海根さんに、いっそのことその身体使って、スーパービッチ化してしまって、そんなつまらない男に拘らず人生謳歌してしまえ!!

とか思うのは私だけでしょうか。


普通に考えて、あゆみは人間として、女としてしたたかで逞しいですし、真っ当に男を転がして幸せになれるでしょう?
その場合は火賀君とくっつくでしょうけど、彼は入れ替わってしまった彼女を”それでも愛している俺”という、セレンティビリティと人間的な信頼を得れるでしょうし。
これは邪推でしょうか、、笑

 

そんでもって、おそらく二人が入れ替わったまま人生を過ごしてきて、30代半ばくらいになって振り返ったときの物語。


ちなみに、あゆみは既にバツイチ子持ちで再婚して結婚8年目という設定しかも幸せそうな感じに海根さんは改めて絶望する
ところから、自身の生き方を問うことが始まる~みたいなストーリーを私だったら描いてしまいそうです。

もはや少女マンガではないですね。笑

 

自分の中のコンプレックスは色は少なくなったとしても、ずーっと付き纏ってくるものなのかなと感じます。

 

コンプレックスがどういう過程で生まれるかということを考えると
自分という存在が、他者の利己的な都合に晒されたときに作られていくものかなと。
利己的な都合は大体相手に悪気がないことの方が多いですから、意地悪いものです。

 

海根さんのようにひねくれてしまうのは、そういった悲しいことに触れてしまう機会が多かったのと、助けてくれる人が少なかったか、あまりに自分が無力だったからでしょう。


あゆみのように、無垢にしたたかな女になれたとしたら、、うーんどうだろ。一回くらいは、バンドマンとかアーティストのダメ男と付き合ってみても愉しいと思います。マジで成績の良い生徒に特に言うことがない教師の気持ちだわよ。笑

 

まーた、わたしはこんなこと書いているから”婚期を逃す”とか言われそう。笑

こういうことにモヤモヤするのも、立派に日本を生きているなとは思います。

 

なんかこう、すっごいマッシブじゃないと幸せじゃないのって苦しいよね。

 

女性差別とか色んな時事問題もありますが、やっぱりそこには、属性ではなくてマッシブさの呪いみたいなのがあるのかなと私は感じます。

 

本日はこのあたりでー