芸大卒に告ぐ、卒業間近に何で絶望するか。

 

f:id:kudomoeko:20180315123735j:image

 

先日、東京芸大の合格発表があったそうです。そして、もうすぐ東京芸大の卒業式でもありますね。 


合格された方も、卒業される方も、

皆さん、おめでとうございます。

 

私は今から9年前に芸大に入学して、2年前に大学院を出ました。
大学はどんな場所なのでしょうか。おそらく日本では、その職業に就くための準備であったり、勉強をする場所として大学が捉えられているように感じます。

 

しかし、巷には東京芸大に折角入っても、、、みたいなネガティブな記事が多いように私は感じますし、もちろん私もその一人でした。


留学を通して他分野の同世代と出会えたことや、一般企業で仕事をしたりフリーランスの仕事をしていく中で、同世代の平均年収くらいは稼げるようになって色々感じる部分がありましたし、不安や焦燥感に押しつぶされそうになっている過去の自分への書き留めと、ある意味で自分が出せるアンサーを書けたらなあと思うのです。


今はとりあえず、理由も良く分からない絶望は無くなっています。

 

なので本日は、美術界の就業や、卒業後の進路事情や、働き方についての記事を書いていきます。

 

卒業してから働くということ

 

まず、この話をする上でとても良い記事があったので、引用します。
就活生へ、世の中には5パターンの仕事しかない。早めに全部経験しておこう

 

世の中の5パターンの仕事

マイナスを0にする仕事 ⇒社会問題解決型
0を1にする仕事    ⇒起業型
1を9にする仕事     ⇒成長企業型
9を10にする仕事     ⇒大企業型
数字を下げない仕事     ⇒ 既得権益死守型

世の中には5パターンの仕事しかないそうです。これは会社で働くことを前提に書かれているので、今、美術に関わっている学生さんや、学校を出たばかりの人の大半は、このあたりが全く関係ないと思っているかもしれないですね。

でも、全くお金なんて稼がなくても生きていけるという場合や、その気がない場合以外は、本当にその考えはやめたほうが良いなと私は感じています。


実際、フリーランスで仕事(商売)をしても、自分という商材を作る上では、商材をお客さんに届ける上でこの5つのパターンのどこに自分が所属するかを意識せざろう得ません。

つまり、上記の稀有な人間に当てはまらないのであれば、少なくとも私たちは美術や芸術と言うツールを使っているだけで他の社会の人たちと全く変わりのないビジネスパーソンであるということ。

そして学校を出るということは、その大海原へ一歩足を踏み出したことでもあるのですね。

 

ちなみに、私の卒業した東京芸大油画科の就職率は大体平均して3%です。まあ、確かに就職と考えると少なすぎる数字ですね。
大半の人は、美術に関する自営業として開業する。つまり美術家を目指す訳ですから。当たり前だとは思うのです。


これを前提に、この中で、美術に関わる仕事というものを、東京芸大油画のメジャーに就くであろう美術家(画家)界隈という仕事で当てはめつつ、なぜ絶望的な気持ちになりやすいのかを書き綴って行きます。

 

まず、芸大油画を出て就く(志望する)ような美術家界隈の職種を、収入を得る経路(商材を売る)という考え方で先ほどの5パターンに当てはめるとこのような感じになります。

 

  • マイナスを0にする仕事 ⇒ 社会問題解決型

⇒ 中高、予備校などの美術教師(社会インフラ整備としての美術家)
・席は全く多くなく競争率も高いが、教員免許を取得すれば開かれる職種。収入は安定している。

 

  • 1を9にする仕事  ⇒ 成長企業型
  • 9を10にする仕事   ⇒ 大企業型

⇒ 一般的な美術家の仕事がこれにあたります。
ギャラリーに所属して(つまり、販路を確保してもらって
作品を売っていく(商材を生産、営業販売する
・競争率は高く、都度契約、歩合給なので収入は不安定。

 

⇒ 大学教員など
・席は極少であるのと、ある程度年齢を重ねた先の職種。いわゆる幹部職です。
一般的な美術家の仕事における商材の付加価値を上げるキャリアですね。収入はかなり安定しています。

 

まず結論から言うと、実は大体の美大卒の人間想定する美術家の仕事においての、販路の確保に焦点を当てると実は0⇒1の仕事(事業創造・起業)という考え方はほぼ選択肢に上げられません。

つまり、自分で資本を生み出していくこと、自分の土俵を開発することがほぼない。もしくはやっていく方法を考えない(考えられない)。

だって、ギャラリー自分で開いて、営業かけて、販路作ってやろうって皆さん考えないでしょ?あとは他のコンテンツ作って稼ぐとか。


つまり、わたしたちは気づいていないだけで、ものすごい少ない椅子取りゲームを、他の選択肢を選ぶことを考慮に入れないままやっていくんです。これは圧倒的に「負ける人間」が多い椅子取りゲームです。

 

日本のアート産業の市場規模はどのくらい?初調査から見えた実態 - インタビュー : CINRA.NET
ちなみに市場規模でいくと、現代美術の平面作品は415億円ほどの規模で、「〇〇ごはんの素」や日本の「Airbnb」と同じくらいです。
「〇〇ごはんの素」なんかは1回200~300円、日本のご家庭ほぼみなさん消費しますし、Airbnbは1泊いっても3000~10000円くらいのもの。


一方、美術品は10万円~で何個も買うものではありませんから、圧倒的に個数を捌いていけない商売なんですよね。


だからプレイヤーの数も限られるし、はっきりいって定年もないですから、記事を元に私たちに入ってくるであろう資本の規模とこれに生産コストなどを考えると、相当小さい商売かつ、圧倒的に人材としては買い手市場なんですね。

 

ここで、絶望している芸大卒を眺めてみると、この状況って就職氷河期や絶滅時代の学生が、就職先が無くて嘆いているような状況に近いのです。

 

私が芸大に在籍していたときも、おそらく今も、こういうことを導いてくれたり、教えてくれたりするひとは全く居ませんでした。

そもそも、この辺りについて考える機会なんて、全員アウトオブ眼中ですから当たり前の話ですけど。
無知は絶望を引き起こしますし、情報があるか無いかで本当に希望的観測ができるかどうかが顕著になってくるなと。

 

何が言いたいかというと、この業界がプレイヤーにとってマネタイズしにくい小さい商売だったら、自身のクリエイティビティの視点をちょっと変えて、0⇒1の仕事(事業創造・起業)を自分ひとりを生かす小さな土俵でいいので作っていけないか、それに付随しつつ制作や創作に必要な技能やアプローチを大学在学中から実際に挑戦してみたり、学んでいけばいいと思うんです。例えば、プログラミングだとかね。

 

そして1日の時間は限られていますから、創造的なことにあてられる時間ご飯を食べるための仕事をしっかりマネジメントしたり、作り上げていけばいいと私は思っています。

 

大半の芸大生が眼が死んでいく理由と、その解決方法。
つまり、決定的に足りないのは、自分の時間と労働をマネジメントできるようになる為の勉強創造性の修練なのです。
(美術家に対して創造性ないって言うのって暴力的だなとか思いつつ、ビクビク言ってます。あと、"そんな小さいこと言ってたら美術家なんてやってらんねえ"とか言う方がいるでしょうけど、むしろ喰うのに時間と体力をそんなとられていたら美術家やっていけないなと、私は思うのです。)

 

現に、私の制作時間は朝5~7時の間ですし、昼間は会社員をして、夜はもう一つの自営業であるカウンセリングと西洋占星術の技術指導の仕事をしたりしてます。
この仕事自体は、絵画を読み解く考え方や、作品でもずっと扱っていく「人間」を研究していく上で勉強している知識を「工藤流」としてコンテンツ化して提供しているので、ある意味で小さな土俵を自分で創造した仕事です。そしてこの分野は市場規模としては現代絵画よりも遥かに大きいですし、単価もほどよく、絵画に比べたらコストも大きくはかかりません。定年も元気な限りありませんし、年齢を重ねれば重ねるほど実績が積まれますから、価値は上がっていくものかなと見込んでます。

 

marumoe-chiron.hatenablog.com

 

何故この話を書いたかというと、これから時間をかけて私自身が体現したり経験していくことが美術家がサバイブするための学びのコンテンツとして、いつか仕事にできたらともちょっと最近考えたりするんですね。つまり、マイナスを0にする仕事⇒社会問題解決型の仕事も出来るようになりたいなと。


だって創造性のある人間が多いほうが世の中楽しくなりますからね!

 

そんな29歳誕生日の1ヶ月前でした。
本日はこのあたりで~